「色即是空(しきそくぜくう)」という言葉、皆さんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。 これは『般若心経』に出てくる有名な一節ですが、漢字が並んでいて、少し難しく感じるかもしれません。 しかし、この言葉には、私たちが抱える悩みやストレスを軽くし、現代をよりよく生きるための重要なヒントが隠されています。
今回は、この「色即是空」の意味をわかりやすく解説しながら、浄土真宗の視点や、私たちの日常生活への活かし方についてお話ししていきましょう。
目次
「色即是空」の意味とは?わかりやすく言えば「すべては変化し続ける」
「色即是空」とは、簡単に言えば「形あるもの(色)には、固定的な実体がない(空)」という意味です。 これを現代の言葉でさらにわかりやすく言うならば、「この世のすべてのものは、絶えず変化し続けており、ずっと同じものはない」という真理を指しています。
「色」と「空」の関係
- 色(しき): 目に見える物質や現象、私たちの肉体、そしてお金や地位など、形あるすべてのものを指します。
- 空(く): 何もないという意味ではなく、「固定した実体がない」「変化し続ける」という状態を指します。
古典の『方丈記』に「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」とあるように、川の流れが絶え間なく入れ替わるのと同様、私たちの人生や世の中も常に変わり続けています。 「色即是空」は、この「変化こそが自然な姿である」ということを教えてくれているのです。
なぜ私たちは苦しむのか?「色」への執着と「思いどおりにならない」現実
私たちは、お金、地位、健康、人間関係など、様々な「色(形あるもの)」を求めます。 しかし、お釈迦さまが「一切皆苦(人生は思いどおりにならないことばかり)」と説かれたように、人生には必ず「苦」がつきまといます。
苦しみを生む「執着」
現代の私たちは、多くのものや選択肢に囲まれていますが、幸せの本質を見失いがちです。特に以下の6つへの執着が、悩みや問題を生む原因となりやすいのです。
- 努力
- 自信
- 野心
- お金
- 他人の評価
- 見栄と嫉妬
「色即是空」の教えに照らせば、これらもすべて「空」であり、変化していくものです。 例えば、他人の評価はコロコロ変わるものですし、お金や地位も、死を迎えるときにはすべて手放さなければなりません。 それらが「変わらないもの」「自分のもの」だと思い込み、しがみつく(執着する)からこそ、思いどおりにならない現実に苦しんでしまうのです。
浄土真宗における捉え方:「修行」はいらない、ありのままで救われる
一般的な仏教のイメージでは、厳しい修行をして悟りを開き、この「空」の境地を目指すものだと思われるかもしれません。 しかし、浄土真宗の開祖である親鸞聖人は「修行はいらない」と断言しています。
自力ではなく「他力」にまかせる
私たちは、自分の力(自力)で運命を切り開こうとしがちですが、生まれた国や時代、家族などは自分では選べません。 また、物事は私たちが「起こす」のではなく、勝手に「起きる」ものです。
浄土真宗では、自分ではどうにもならないこと(空であること)に思い悩み、自力でなんとかしようとするのではなく、阿弥陀さまの働き(他力)におまかせすることを大切にします。 「南無阿弥陀仏」と唱えるだけで、修行をしなくても、ありのままの自分で救われるというのが浄土真宗の教えです。 これは、「変化し続ける世の中で、自分の力には限界がある」と認める、非常に合理的な生き方とも言えるでしょう。
現代社会で「色即是空」を活かすには?
では、変化の激しい現代社会で、私たちはこの教えをどう活かせばよいのでしょうか。 それは、難しい修行をすることではなく、日々の生活の中で「視点」を変えることです。
1. 「今」を大切にする(刹那を生きる)
過去を悔やんだり、未来を不安に思ったりすることは、実体のないものに心を奪われている状態です。 「色即是空」が教えるように、確かなものは変化し続ける「今」この瞬間しかありません。 「今を生きる」とは、刹那的になることではなく、二度と来ないこの瞬間を大切に扱うということです。今日が人生最後の日かもしれないという意識を持つことで、日々の景色は変わって見えます。
2. 結果に一喜一憂せず、淡々と行動する
ビジネスや生活において、成功するか失敗するかは「運」の要素も強く、自分ではコントロールしきれません。 結果(色)に執着しすぎず、「できることに力を尽くし、ダメなら謝ってやり直す」という淡々とした行動の積み重ねが大切です。
3. 悩みや苦しみを「経験」として受け入れる
辛いことや悲しいことも、永遠には続きません。 人生は思いどおりにならないものだと受け入れ、その変化を味わいとして捉えることができれば、苦しみも「人生の深み」に変わります。 毎日を生きること自体が、すでに十分な修行なのです。
まとめ
「色即是空」――この言葉は、私たちに「物事は移ろいゆくものだから、執着しすぎなくていい」と教えてくれています。
もし、あなたが今、何かに悩み、行き詰まりを感じているなら、一度肩の力を抜いてみてください。 そして、「自分の力でどうにもならないことは、阿弥陀さまにおまかせしよう」と、心を軽くしてみてはいかがでしょうか。 人生を変えるのに、厳しい修行は必要ありません。 変化を受け入れ、今この瞬間を精一杯生きることで、あなたの人生はより豊かになっていくはずです。


















僧侶、著述家、仏陀倶楽部(BuddhaClub)代表
愛知県名古屋市出身。浄土真宗大谷派である名古屋大谷高校業後、20歳で独立起業。自動車販売業、美容事業、飲食事業、リサイクル事業と、次々に事業を立ち上げる。
独立起業後10年を経て自身の中に湧きあがる疑問と向き合うため、事業を整理し、ヨーロッパを中心に世界30カ国以上を旅する中で、多くの宗教や文化、習慣や常識の違いに触れる。
「人は生きているだけで毎日が修行」という考えに至り、時代が変化しても自然淘汰されない“在り方”を仏教に見出す
現在は誰でもすぐ「得度」をできる活動を推進中。
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