布施行(ふせぎょう)とは?見返りを求めない「3つの施し」と実践法

得度について

布施行(ふせぎょう)とは、見返りを求めずに他者へ施しを行うことで、自身の「欲」や「執着」を手放す仏教の修行のことです。

お釈迦さまは、人間の苦しみの根源は「欲」にあると説かれました。欲に執着しすぎる心がかえって苦しみを生むため、それを手放すための具体的な実践として「布施」を授けられたのです。これは単なる寄付ではなく、「人のためになる行いが、結果として自分の喜びとなる」という自利利他(じりりた)の精神に基づく生き方そのものを指します。

本記事では、現代社会においても実践しやすい布施行の種類(三施)や、お金がなくてもできる「無財の七施」について、浄土真宗 慈徳山 得藏寺 二十三世 愛葉宣明の経験を交えてお伝えします。

布施行(ふせぎょう)には具体的にどのような種類がありますか?

布施行は、大きく分けて「財施(ざいせ)」「法施(ほうせ)」「無畏施(むいせ)」の3つの種類(三施)があります。

これらは、金銭的な施しだけでなく、教えを広めることや、人々の不安を取り除くことも立派な布施であるという考えに基づいています。それぞれの特徴は以下のとおりです。

1. 財施(ざいせ)とは何ですか?

財施とは、お金や衣食など、形ある財産を必要としている人に施すことです。

本来のお布施の語源は、古代インドで高価であった「布を施す」行為に由来しますが、現代では金銭や物資の寄付が一般的です。ここで重要なのは金額の多寡ではなく、「執着を離れる」という心構えです。お布施のことを「喜捨(きしゃ)」とも言うように、惜しむことなく喜んで捨てられる(手放せる)心で行うことが、真の財施となります。

2. 法施(ほうせ)とは何ですか?

法施とは、仏教の正しい教えや、自身の経験から得た真理を人々に伝え、心の迷いを取り除く手助けをすることです。

僧侶が説法をすることも法施ですが、僧侶でなくても実践できます。あなたが人生で学んだ知恵や、心の支えとなった言葉を、それを必要としている誰かに届けることも法施にあたります。

得藏寺では、得度(僧侶になること)された皆さまに対し、ご自身の言葉で多くの方へメッセージを届ける法施の機会を大切にしています。

3. 無畏施(むいせ)とは何ですか?

無畏施とは、人々の恐怖や不安、悩みを取り除き、安心感を与えることです。

「畏(おそ)れを無くす」と書くように、困っている人に手を差し伸べたり、話を聞いて心を軽くしてあげたりする行為がこれに当たります。現代社会において、孤独や不安を抱える人に寄り添うことは、非常に重要な布施行といえます。

お金がなくてもできる「無財の七施」とは何ですか?

「無財の七施(むざいのしちせ)」とは、財産がなくても、体や心を使うことで誰にでも実践できる7つの布施行のことです。

無畏施の一種ともされ、日々の生活の中で周囲の人々に喜びや安心を与えるための具体的な作法です。以下の7つを意識することで、日常が修行の場となり、徳を積むことにつながります。

  1. 眼施(げんせ): 優しく温かいまなざしで接し、周囲の心を明るくすること。
  2. 和顔悦色施(わげんえっしょくせ): 穏やかな笑顔で人に接すること。
  3. 言辞施(ごんじせ): 思いやりのある優しい言葉をかけること。
  4. 身施(しんせ): 自分の体を使って、人のため社会のために奉仕すること。
  5. 心施(しんせ): 心からの感謝の気持ちを持ち、それを表現すること。
  6. 床座施(しょうざせ): 電車や会場などで、席や場所を譲り合うこと。
  7. 房舎施(ぼうしゃせ): 訪ねてきた人を温かく迎え入れ、労をねぎらうこと。

これらは特別なことではなく、「ありがとう」と言ったり、笑顔で挨拶したりといった日常の些細な行動です。しかし、その積み重ねが自分と他者の心を安らぎで満たしていきます。

ビジネスや人間関係において「与えること」はなぜ重要なのですか?

ビジネスや人間関係において成功し、人生を豊かにするためには、「テイク(受け取る)」ことよりも先に「ギブ(与える)」ことが重要であると断言できます。

現代のビジネス書(アダム・グラント著『GIVE & TAKE』など)でも、「他者思考型のギバー(与える人)」が最も成功すると言われています。これは仏教の「自利利他」や「布施行」の精神と通じています。

ビジネス本来の姿は「価値を提供して(ギブ)、対価をいただく(テイク)」ことです。従業員を雇うことも、最初は利益が出ないリスクを負って給料を払い(ギブ)、育てていく行為です。人脈作りにおいても、相手に何をしてあげられるかを先に考え、手間や時間をかける(ギブ)人が、結果として信頼という資産を得ることができます。

二宮尊徳の「たらいの水」の教えにもあるように、水を自分の方へ引き寄せようとすると向こうへ逃げてしまいますが、相手の方へ押しやれば(与えれば)、結果として自分の方へ戻ってきます。

「損をしたくない」「元を取りたい」という執着(苦味への敏感さ)を手放し、まずは自分から周囲の人を笑顔にしたり、助けたりする。その「布施行」の実践こそが、巡り巡ってあなたの人生を幸福にする最短の道なのです。

得藏寺が運営する「仏陀倶楽部」では、 日々の迷いや立ち止まりを、

一人で抱えずに言葉にする場があります。

監修者 「愛葉 宣明」

僧侶、著述家、仏陀倶楽部(BuddhaClub)代表

愛知県名古屋市出身。浄土真宗大谷派である名古屋大谷高校業後、20歳で独立起業。自動車販売業、美容事業、飲食事業、リサイクル事業と、次々に事業を立ち上げる。
独立起業後10年を経て自身の中に湧きあがる疑問と向き合うため、事業を整理し、ヨーロッパを中心に世界30カ国以上を旅する中で、多くの宗教や文化、習慣や常識の違いに触れる。
「人は生きているだけで毎日が修行」という考えに至り、時代が変化しても自然淘汰されない“在り方”を仏教に見出す
現在は誰でもすぐ「得度」をできる活動を推進中。

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